花粉症でお困りですか?

花粉症ってどんな病気?

花粉症とは、鼻や眼の粘膜に付着した植物の花粉が、免疫系の過剰な反応を引き起こすことによって生じる「鼻水」「鼻詰まり」「くしゃみ」「眼のかゆみ」「目やに」「涙目」などの不快な症状のことを指します。医学的にはアレルギー性鼻炎やアレルギー性結膜炎などと呼ばれ、内科や耳鼻科、眼科などで治療されます。花粉症は命に関わる病気ではありませんが、辛く不快な症状のため仕事や勉強、家事などの日常生活に支障をきたすことが少なくありません。社会的にも大きな問題となっている病気です。

花粉の時期はいつからいつまで?

植物の種類を問わなければ花粉自体は一年中飛んでいますが、スギやヒノキなど春に飛ぶ花粉にアレルギーを持つ方が多く、一説によると日本人の30%がスギ花粉症に罹患しているとも言われています。

花粉が多い時期は地域によって決まっており、

関西地区では

スギの花粉は2月から4月にかけて多く、概ね3月がピークです。

ヒノキの花粉は3月から5月にかけて多く、概ね4月がピークです。

また、秋ごろにはブタクサやヨモギなどの雑草の花粉が飛散することが多く、8月から10月にかけて花粉症の症状が見られる方もおられます。

花粉症は増えているの?

花粉症は暴露される花粉の量が多いほど発症しやすいと言われています。第二次世界大戦後にスギの植林が広く実施された影響もあり、スギ花粉の飛散量は年々増えています。このため花粉症を発症してしまう方も年々増えているのが現状です。以下に少し詳しくスギ花粉症の経緯を述べています。

第二次世界大戦中、日本国内では資材や燃料の不足から森林の過剰な伐採が横行し、全国にいわゆる「ハゲ山」が増えました。これによる水害などの問題に対処するため、全国的に植林が進められましたが、この際に広く植えられたのがスギです。

なんと迷惑な、と思われるかもしれませんが、当時は誰もこんなことになるとは予測していなかったのです。

というのもスギは日本に固有の種で(海外ではスギ花粉症はほとんど見られません!)、本州から九州の屋久島まで広く分布しており、真直ぐに育つうえ加工もしやすいと多くの利点を持っています。このため植林の際はスギが頻用され、今や国内の森林の18%がスギ人工林となっています。またスギが花粉を飛ばし始めるのは植林からおよそ30年程度たってからと言われており、植林が始まった時期には花粉の問題に気付かれにくかったのだと思われます。結果として年々花粉を飛ばすスギの量は増えており(現在では多くのスギ人工林が既に植林から30年以上たっています)、これに伴って花粉症も増えているというわけです。

ただし近年は花粉をほとんど飛ばさないスギの品種も開発されており、数十年後にはスギ花粉の量は今よりも大幅に減っているかもしれません。

スギ花粉の飛散量は前年夏の日射量が多く、降水量が少ないほど多くなる傾向にあるとされています。また、花粉が少ない年の翌年は花粉が多くなる傾向もあるようで注意が必要です。

効果的な花粉症対策とは

自分でできる花粉症対策は、ともかく花粉との接触を避けることです。一般的には外出時にはマスクやメガネ(できればゴーグル)で鼻や眼をガードすることが推奨されています。帰宅時には洋服などに付着した花粉を落としてから家に入るようにし、帰宅後すぐに手洗いやシャワーなどで花粉を落としましょう。洗濯物も屋内に干すことが勧められています。シーズン中には長時間の外出を控えることも効果的でしょう。

ただ、上記のような内容を常に実践することには無理があります。わたしのようなオジサンがゴーグルをつけて外をうろついていた日には、すぐに不審者として通報されること間違いないでしょう。洗濯物も部屋干しではにおいが気になりますよね。どうしても外干ししたくなる日もあると思います。

花粉症はこの先長く付き合っていく必要のある病気ですので、長期にわたり継続できる自分なりの対処法を見つけることが重要です。そのためには次に述べるような薬もうまく利用して、無理なく花粉の季節を乗り越えるようにしましょう。

花粉症の薬① これが基本、抗ヒスタミン薬

花粉症は「花粉に対する免疫系の過剰反応」によって生じます。この過剰反応を引き起こすための伝令となる物質がヒスタミンです。ヒスタミンをブロックすることで花粉症を抑える薬が抗ヒスタミン薬になります。比較的効果が出るまでの時間が早く、特に鼻水・くしゃみ・かゆみに有効です。基本的には内服薬ですので、鼻や眼、喉などの全ての症状に効果が期待できます。

第一世代と呼ばれるグループは1940年代からアレルギー治療薬として用いられ、その有効性と安全性は確立しています。しかし脳内にも移行することから眠気が出やすい、「ヒスタミン」以外にも「コリン」と呼ばれる物質をブロックしてしまうために口渇・頻尿・頻脈などの副作用が出やすいなどの問題がありました。そこで脳内に移行しにくく(眠気が出にくい)、抗コリン作用も少なく、ヒスタミン以外のアレルギー物質も抑制するような第二世代と呼ばれる薬が開発されました。当院では主に第二世代の抗ヒスタミン薬を使用しており、一般的に妊娠中の方や授乳中の方でも安全に使用できるとされています。

以下に当院で花粉症に処方している代表的な抗ヒスタミン薬をいくつか挙げています(全て第二世代です)。

  • ビラノア錠(一般名:ビラスチン)は速効性があり眠気が少ない薬剤で、この種の薬には珍しく車の運転に対する制限もありません。効果時間も長いため1日1回の内服で大丈夫ですが、脂肪分により吸収が阻害されるため食事を避ける(食前1時間と食後2時間は避ける)必要があります。このため就寝時か、朝食を避けて出勤後などに飲まれる場合が多いようです。水なしで飲めるOD錠(ライム味)も発売されています。眠気がなく効果も強めな薬ですが、やや使い勝手が悪い印象です。
  • ザイザル錠(一般名:レボセチリジン)も速効性がありますがビラノアよりは眠気が出やすいとされています。1日1回1錠内服が基本ですが、1回2錠まで増量できます。水なしで飲めるOD錠もあります。ジルテックの改良版になり、妊婦や授乳中の方でも比較的安全に内服できる薬剤です。小児への使用も生後6か月から認められています。食事に関係なく内服可能ですが、眠気が出ることがあるため(昔の薬よりはだいぶましですが)就寝前に内服することが一般的です。眠気と効果、使い勝手のバランスが良い薬です。
  • クラリチン(一般名:ロラタジン)/デザレックス(一般名:デスロラタジン)は同系統の薬です。古くからある抗ヒスタミン薬であるクラリチンは体内で代謝されて薬効を発揮しますが、この代謝活性物質を薬にしたのがデザレックスです。デザレックスはクラリチンよりもさらに速効性があるとされていますが、もともとクラリチン自体も速効性のある薬とされていたので、それほど差はないようにも感じます。ビラノア同様に眠気はほとんど出ません。また食事に関係なく内服可能で使い勝手の良い薬ですが、効果はザイザル・ビラノアより少し劣る印象です。クラリチンは市販薬としても発売されており安全性も確立していますので、妊婦さんや授乳婦の方が薬剤を希望される場合には、こちらを処方していることが多いです。眠気がなく使い勝手も良いですが、効果は比較的マイルドです。

余談ですが、ザイザル・デザレックスはどちらも2016年11月18日に発売されました。一説によると11月18日はミッキーマウスの誕生日ですので、ミッキーのような人気者になるためにこの日を選んだと言われています。しかし実はこの日は院長の誕生日でもありますので、院長のような人気者(?)になるためにこの日を選んだ可能性もあります。

花粉症の薬② 鼻詰まりがひどい時に、ロイコトリエン受容体拮抗薬

ロイコトリエンは血管を拡張させ、鼻の粘膜にむくみを生じさせる物質です。このロイコトリエンの作用をブロックすることでむくみを取り、鼻詰まりを解消する効果を持つのがロイコトリエン受容体拮抗薬薬です。喘息にも使用されることがあります。眠気の副作用は少ないですが即効性には乏しく、毎日内服して数日目以降に徐々に効果が出てくる薬です。当院では主にキプレス(一般名:モンテルカスト)を処方することが多いです。1日1回1錠を、基本的には抗ヒスタミン薬と同時に内服して頂いています。

花粉症の薬③ 局所治療薬:鼻症状が中心なら点鼻薬

鼻症状が中心なら、点鼻薬という選択肢もあります。内服薬と併用することでより高い効果が得られます。

注意点として点鼻薬の成分には「血管収縮薬」と「ステロイド」があります。

「血管収縮薬」の方が速効性があるものの、使いすぎると反応が悪くなるばかりか逆に血管が拡張し続けるようになってしまい、難治性の鼻詰まりを生じてしまうことがあります。市販の点鼻薬の大半はこの「血管収縮薬」を主成分とするため、「1週間以上使い続けないこと」と書いてありますが・・・みなさん気付いておられましたか?使い方を間違えると問題になりやすい薬で、なぜ市販されているのか疑問に思うくらいです。当院では基本的にこちらのタイプの薬は処方しません。

一方で「ステロイド」は即効性には劣るものの高い抗炎症作用があり、毎日使用すると数日後から症状を大きく改善してくれます。たまに一回使っただけで効かないと思って使用をやめてしまわれる方がおられますが、この薬は使い続ける必要のある薬です。だまされたと思ってもうしばらく続けてみて下さい。またステロイドは副作用が怖いというイメージをお持ちの方もおられるかもしれませんが、点鼻の場合は体内に微量しか吸収されませんので、ステロイド特有の副作用を心配する必要はまずありません。

以上から当院では主にステロイド点鼻薬(モメタゾン)を処方しています。

花粉症の薬④ 局所治療薬:眼症状が中心なら点眼薬

眼のかゆみ、めやに、充血、涙目といった症状に対しては点眼薬もよく用いられます。主に「抗ヒスタミン薬」と「ステロイド」があります。

「抗ヒスタミン薬」は①と同じものですが、点眼することで眼粘膜での薬剤濃度を高めることが出来ます。当院で頻用している薬はアレジオンLX 0.1%です。点眼薬の多くは1日4回程度と頻回に使用する必要がありますが、この薬は1日2回タイプになっており、使用回数が少なくてすみます。また防腐剤も含まれておらず、コンタクトレンズを使用しておられる方でも安心して使用可能です。

「ステロイド」の点眼薬は炎症を抑える強い力があります。炎症による腫れや赤み、かゆみを和らげることが出来ます。どちらかというと症状が重い方に使用されることが多い薬です。ただしステロイドを使用すると眼圧が上がってしまう方が一定数おられます。眼圧が上がりすぎると緑内障を発症することになりますので、注意が必要です。ステロイド点眼薬は眼科で処方してもらった方がいいかもしれません。

花粉症の薬を使用するうえで注意すること

花粉症は花粉が飛散する前、症状が出始める前から治療を開始するのが良いとされています(花粉が飛び始める2週間程度前)。早期に治療を開始することで症状を軽くすることができるとされています。

また、花粉の飛散量は日によって大きく変化します。今日は症状が軽いからといって薬をやめてしまうと、翌日花粉の量が増えて症状が一気に悪化してしまうかもしれません。花粉の季節には治療を継続することが重要です。