新型コロナワクチンの接種・予約について

(2023.8.17全体を改稿)

目次

令和5年度の新型コロナワクチン接種の考え方とスケジュールについて

新型コロナワクチンの効果(ウイルスに対する抗体価)は接種回数が増えるごとに階段状に上昇します。しかしその後3~6か月かけて徐々に効果が低下していきます(ゼロになるわけではありません)。

また、ワクチンによる新型コロナウイルス発症予防効果は限定的ですが、重症化予防効果は依然として高いと考えられています。

以上を踏まえ国は、

  • 重症化リスクの高い方(高齢者や基礎疾患をお持ちの方)や、そうした方に接する機会が多い医療従事者などには年2回接種(春開始接種と秋開始接種)を
  • それ以外の人にはインフルエンザワクチンと同じ年1回接種(秋開始接種)を

実施することにしました。

これを受けて令和5年度春開始接種がR5年5月から開始となりました。これまで終了時期が明確に示されてきませんでしたが、R5年8月7日付の通知により、リスクが高い人を対象とした春開始接種はR5年9月19日までで終了となることが示されました。

さらにワクチンの初回接種が終了している(これまでに2回以上接種している)全年齢の方を対象にした秋開始接種がR5年9月20日から開始されることになりました。

令和5年度・秋開始接種に対する当院の対応について

対象者

既に2回以上接種を終わらせている全ての方(初回接種完了者)が対象となります。

ただし当院では12歳以上の方を対象にする予定です。

当院における接種開始日について

現在西宮市からはまだワクチンの配送スケジュールに関する詳細が明らかにされていません。よって少し余裕を持って9月29日(金曜日)から接種を開始する予定です。

当院における接種スケジュールについて

引き続き、金曜日・土曜日・日曜日にワクチンの接種を行う予定です。西宮市から潤沢にワクチンを供給して頂けた場合は、月曜日や火曜日にもワクチン接種を行います。

使用するワクチンについて

令和5年度秋開始接種では、現在の流行の主流となっているオミクロン株XBB.1.5系統に対応した1価ワクチンが使用される予定です。基本的にこれまで同様ファイザー社製ワクチンを使用しますが、西宮市からのワクチン供給が十分でない場合にはモデルナ社製ワクチンも使用する可能性があります(その場合、曜日により使用するワクチンを変更します)

前回のワクチン接種から空けるべき接種間隔について

2023年8月現在、新型コロナワクチンの接種は基本的に前回から3か月以上間隔を空けることとなっています。しかし秋開始接種については、何カ月以上間隔を空けるべきか、未だ国から正式な方針が示されていません。おそらく3か月になるだろうと思いますが、正式な方針が示され次第、こちらのページもアップデート予定です。

またその他、インフルエンザワクチン以外のワクチンとは接種間隔を2週間以上開ける必要があります。

ワクチンの接種時に必要なもの

接種券と、本人確認書類としての保険証が必要です。

令和5年度春開始接種を受けられた方には9月7日より西宮市から順次接種券が発送される予定です。

令和5年度春開始接種を受けられなかった方は、春ごろに送付された未使用の接種券があると思いますので、そちらをご使用ください(追加で発送はされない見込みです)

予約について

電話ないしWEBからの予約を承っています。

ただし2023年9月19日以前の予約は全てオミクロン対応2価ワクチンを用いた「春開始接種」の予約です。秋開始接種を予約される場合は9月20日以降の予約をお取りください。

オミクロン株って?

全ての生物と同様、新型コロナウイルスはその設計図である「遺伝子」を内部に持っています。

新型コロナウイルスの設計図はDNAよりも構造的に不安定な物質であるRNAに書き込まれており、増殖にあたって書き写される際に書き間違い(突然変異)を起こしやすくなっています。

このウイルスの設計図の写し間違いの結果、新型コロナウイルスには当初武漢でみられたオリジナル株と比較して表面のたんぱく質構造が変化した「変異株」が多数出現してきました。

2021年の夏ごろを中心に流行したデルタ株はオリジナル株より感染力が強いだけでなく、肺炎を生じやすかったため猛威を振るいました。

一方で現在の流行の中心はオミクロン株です。オミクロン株はデルタ株よりも感染性は高いものの、重症化率・致死率は低下していると考えられています。

第90回厚生労働省新型コロナウイルス感染対策アドバイザリーボードの資料を見ると

デルタ株における重症化率(=人工呼吸器を使用する必要がある肺炎患者の割合)と致死率は

60歳未満で順に0.56%と0.08%

60歳以上で順に5.0%と2.5%

でした。

一方でオミクロン株における重症化率(人工呼吸器を使用する必要がある肺炎患者の割合)と致死率は

60歳未満で順に0.03%と0.01%(季節性インフルエンザとほぼ同等)

60歳以上で順に2.49%と1.99%

となっています。

以上のように健康な若年者にとってはオミクロン株はインフルエンザと同じ「ちょとひどい風邪」に近い病気になっています。ただし高齢者や基礎疾患を持つ方にとっては、依然として肺炎を起こして入院が必要になったり、場合によっては命を落とす可能性がそれなりにある疾患です。

そしたらXBBって?

R5年春開始接種ではBA.1対応型ワクチンやBA.4-5対応型ワクチンが用いられてきました。9月20日から予定されている秋開始接種にはXBB.1系統対応型ワクチンが用いられます。

BAとかXBBとかアルファベット並べられても意味わからんわー、と皆さんお思いのことでしょう。

新型コロナウイルスは表面のたんぱく質の構造的な差(あるいは遺伝子配列の差)からα株、β株、デルタ株、オミクロン株といった「株」に分類されます。

さらにオミクロン株の中でも、微妙な構造の差に注目するとBA.1・BA.2・BA.3・BA.4・BA.5・XBB.1などにオミクロン株を細分化することが出来ます。

つまりBAやXBBというのは、オミクロン株の中における分類名です。

例えば新型コロナウイルスを「野球ファン」の集団に例えて考えてみると、デルタ株やオミクロン株は巨人ファンや阪神ファンといった分類に当てはまります。どちらがどちらでも良いのですが、便宜上デルタ株を巨人ファン、オミクロン株を阪神ファンとします。さらに阪神ファンの中にもA選手が好き、あるいはB選手が好き、と色々な選手推しのファンがおられることと思います。A選手推しのファンがBA系統、B選手推しのファンがXBB系統に該当すると言えるでしょう。

ただまあ細かな差なので、BA系統のワクチンでもXBB系統の新型コロナウイルスに対する抗体は作られます。今まで打ってきたワクチンが無駄になった訳ではありません。

実は私達が毎年のように冬季に打っているインフルエンザワクチンも、その年に流行するインフルエンザの株を予測してそれに対応するワクチンが出荷されています。しかしインフルエンザワクチンに関して何株に対応したワクチンであるかを気にされている方はほぼいないと思います。同様に新型コロナワクチンに関しても、何株対応かまで気にされる必要はあまりないように思います。

すでに新型コロナウイルスに感染したんだけど、ワクチンは必要?

2022年冬、2023年夏と新型コロナウイルスの大きな流行が見られています。既に一度以上新型コロナウイルスに感染された方も多くおられると思います。

そのためか、最近はこのような質問を受けることが増えてきました。

私からの結論としては、少なくとも令和5年度秋開始接種に関してはワクチンを受けることをお勧めします。

というのも、感染により得られる免疫とワクチン接種により得られる免疫とは異なることが知られています。

オミクロン株が流行する前の研究であったと思いますが、ワクチン(ファイザー、モデルナの従来型ワクチン)を接種した集団(ワクチン接種群)の5%が新型コロナウイルスに感染する(いわゆるブレイクスルー感染)までの期間と、新型コロナウイルスに感染したがワクチンを打っていない集団(感染のみ群)の5%が新型コロナウイルスに再感染するまでの期間を比較した研究では、「ワクチン接種群」の方が「感染のみ群」よりも感染までの期間が有意に長かったことが示されています。

また、新型コロナウイルスに対する血中の抗体価は、感染のみ<ワクチン接種者<感染+ワクチン接種者の順に高くなります。ただし感染やワクチン接種から日が経つほどに抗体価は低くなっていきます(ワクチン接種を重ねると、より長期間高い値が持続するようになるようです)

異論のある方もおられるかもしれませんが、少なくとも私(院長)は新型コロナワクチンを打ちますし、インフルエンザワクチンも打ちます。

ワクチンについてさらに詳しく知りたい方は、厚生省のサイトである「新型コロナワクチン Q
&A
」を参照してください。