「ここまでわかる!胃カメラ・大腸カメラ・腹部エコー」シリーズ 第13回 胃粘膜下腫瘍
胃粘膜下腫瘍とは
一般的に消化管の壁は内側から粘膜・粘膜下層・筋層の3層に分かれており、胃も同様です。
実は胃癌やポリープといった胃にできる腫瘍の多くは、この3層のうち表層の粘膜から発生します。
しかし稀ながら粘膜下層や筋層から発生する腫瘍があり、この胃壁の深い所から発生する腫瘍を「胃粘膜下腫瘍」と呼びます。
胃粘膜下腫瘍の多くは良性のもの(放置しても問題ないもの)ですが、一部に悪性のもの(治療をしないと命に関わるもの)も存在します。
胃粘膜下腫瘍はさらに胃消化管間質腫瘍(GIST)、脂肪腫、平滑筋腫、迷入膵、リンパ管腫瘍、神経鞘腫などに分類することが出来ますが、一般の方はあまり細かな分類に神経質になる必要はありません。
画像解説


A,Bともに同じ画像です。Bでは粘膜下腫瘍が分かりやすいように黄色い丸で囲ってあります。
粘膜下腫瘍の表面は正常の上皮で覆われているため、つるっとしています。
さらに腫瘍が下から粘膜を持ち上げている影響で、辺縁部分はなだらかに立ち上がっていることが多いとされています。
治療方針の決め方
まず2cm以下の粘膜下腫瘍は悪性である可能性が低く、年に1~2回ほど胃カメラで大きさを確認するだけで良いとされています。
ただし表面に潰瘍が出来ていたり、辺縁部分の形が不整(綺麗なお椀型ではない、いびつな形)であったり、経時的に増大傾向にある場合は悪性の可能性があり、切除が考慮されます。
2cm以上の粘膜下腫瘍では細胞を採取して顕微鏡検査を行うことが推奨されています。
しかし粘膜下腫瘍の表面は分厚い正常粘膜で覆われているため、通常の胃カメラでは直接細胞を採取することが出来ません。このため
(1)超音波内視鏡と呼ばれる特殊な内視鏡を用いて粘膜下腫瘍に針を刺して細胞を採取したり、
(2)粘膜を切開して粘膜下腫瘍を露出させてから細胞を採取したり、
(3)粘膜を少しずつ掘っていって粘膜下腫瘍に到達したり(ボーリングバイオプシー)、
色々な工夫を凝らして細胞を採取する必要があります。
確実性と安全性に優れる方法は(1)ですが、多少の慣れが必要なことと、腫瘍内で針を動かす必要があるため、ある程度大きな腫瘍でないと十分な細胞が取れないことに注意が必要です。
顕微鏡検査でGISTと診断されると、悪性腫瘍の可能性があるため切除が推奨されます。それ以外の場合は、経過観察のみとなることが大半です。
画像でお見せした病変は1cmもないような大きさですので、定期的に経過観察することになります。
私は初めて見つけた病変に対してはまず半年後に経過観察し、そこで大きさに変わりがなければ年1回の経過観察とすることが多いです。
注意事項
注意事項1:本シリーズで取り上げる画像は全て当院で撮影したものです。検査画像の利用については、内視鏡検査前のアンケートで利用の可否を確認しています(腹部エコー検査に関してはオプトアウト方式をとっています)。
注意事項2:患者様の善意によって成り立つ投稿です。本シリーズは疾患の啓発や若手医師の研鑽に役立つことを目的としています。画像の無断利用、転載は固くお断りします。削除依頼に応じて頂けない場合は法的手段を取ります。