発熱外来の現状について

はじめに

 7月にいわゆる第7波が始まり、しばらくブログを更新する余裕もありませんでした。

 正直今もそれほど余裕がある訳ではありませんが、当院が2022年5月に開院後に経験した初めての「波」がどのようなものであるのか、医療現場の現状をお伝えしたいと思い、この投稿を書きました。

 ここに書いたのはあくまでもクリニックにおける発熱外来の現状であり、おそらく介護施設、病院や休日診療所、救急隊ではまた違った苦労をしていることだろうと思います。

 早くこの波が去ってくれることを、ただただ願っています。

いつ流行に気付いたか

 7月に入って検査で陽性となる方が急激に増え、これはおかしいと感じました。

 もともと5月から6月にかけての当院における検査陽性率は3割前後でした。(一般の発表よりも陽性率が高いのは、当院を受診される多くの方が有症状者であるためです。)

 この陽性率が7月に入ってから上昇し始め、7月第2週には8割を越えるようになりました。

 あまりに急な変化に、当初はPCR検査機器の故障を疑ったほどでした。

 現在は後述するようにPCR検査試薬が不足しているため抗原検査のみ実施していますが、それでも8割近くの方が陽性となっています。

 8月になってからは7月当初とは逆に陰性が出るたびに検査キットの不備を疑うほどです。

クリニックの電話がパンクした

 さらに流行期の訪れを感じさせたのは、受診を希望される方からの電話の多さです。

 特に週末は電話が鳴り止まず、業務に支障をきたすほどでした。

 というのも、当院の発熱外来では受診された方と職員との接触を最小限にするため、可能な限り患者さんの携帯電話を介して案内するようにしていました。

 しかし問い合わせの電話が多くなると電話での案内が出来なくなり、結果的に医師や看護師が患者さんと長時間対面で接さざるを得なくなりました。事前の想定が甘かったのかもしれませんが、開院してすぐのクリニックにこれほど問い合わせが殺到するとは考えていませんでした。

 これを解決するため、〇天の格安スマホを急遽取り寄せ、発熱外来での案内に使用するようにしました。今は何とか業務が回っていますが、土日は朝からクリニックの電話が鳴り止まず、電話がつながらないとお叱りを受けることもしばしばです。

発熱外来の予約は前日には埋まる

 また、土日と月曜日の予約は前日にはほぼ全て埋まってしまいます。

 現在は出来るだけ西宮市内の方や、重症化リスクの高い方を優先するように心がけていますが、どのような方から予約の電話が入ってくるか予想することは困難なため、予約が埋まってからの問い合わせに苦慮することも多くあります。

 当初は2日先まで予約を取っていたのですが、2日後の予約はキャンセルされる方が多く(それまでに別の所で検査を受けられる方が多い)、事前問診やキャンセル確認を繰り返すことで職員が疲弊することになってしまいました。

 現在は予約を1日前から受け付けるようにしています。

感染した職員も出た

 そして当然のことながら、これほどの流行下にあっては職員の家族や職員自身にも感染者が出てしまいました。

 抗原検査キットを活用し、陰性を確認しながら何とか診療を継続しましたがギリギリでした。あともう一人職員から陽性者が出ていたら、1週間ほどクリニックを閉めることになったと思います。

 職員は流行前から自主的に食事場所を分けるなど、感染対策を徹底してくれていたため、院内では感染が広がりませんでしたが、第7波の勢いを強く感じました。

 また感染対策として、専用の検査室にサーキュレーターを購入して外気との換気を徹底するようにしました。さらに発熱外来における検査や会計の手順を見直し、患者さんが検査室から出た後の換気時間をより長くとれるようにしました。換気中は職員も検査室に立ち入らないようにしています。

 8月6日からはようやく全職員が隔離期間明けを迎え、一息つけたところです。

院内PCR検査試薬が入荷しなくなった

 この流行にあたっての最も後悔しているのは、院内PCR検査用の試薬を切らしてしまったことです。

 流行前にも一度検査試薬の入荷が遅れたことがあり、少し多めに在庫を確保していたのですが、7月に入ってピッタリと入荷が止まりました。

 このため7月最終週には院内在庫が底をつき、現在も抗原検査しかできない状態となっています。

 外注のPCR検査を利用することも考えましたが、検査機関にもキャパを大幅に上回る注文が殺到しているとのことで、結果判明まで2日以上かかることもあると告げられ、実用的ではないと考えました。

 ただ、現在は抗原検査でも8割近い方が陽性となります。感度6~7割程度とされる抗原検査でこの陽性率が出るとすると、有病率はとんでもないことになっていそうですが、、、敢えてあまり考えないようにしています。

 しかし偽陰性の確率は確実に高くなっています。そこで以前は陰性の方は待合で会計を済ませて頂いていましたが、今は待合に入らないようにしてもらっています。

お盆休みの医療現場が心配

 少し前に政府から、お盆休みに開院してくれるクリニックには補助金を出す旨お達しが来ました。

 ・・・いや、遅いって。

 7月の前半には8月のシフトを決めていますし、5月に開院した時点で職員には夏休み期間を告知していました。協力したい気持ちはあるのですが、急に言われても休みを動かすのは不可能です。私一人なら何とかなりますが、家族のいる職員の休みを急に変更する訳にもいきません。

 しかしこの流行下で発熱外来を実施している各クリニックが一斉に外来を閉じると、大きな混乱が生じるのではないかと思っています。エライ人たちが何か対策を考えているのか、ちょっと不安になっています。