当院における2022年5月度の新型コロナウイルスPCR検査結果

はじめに

 当院では新型コロナウイルスに対するPCR検査(正確には核酸増幅検査の一種であるNEAR法)を実施しています。

 開院から一か月が経ちましたので、当院におけるこの間の陽性率(新型コロナウイルス感染症と診断した割合)や、陽性となった患者さんの特徴をお伝えしたいと思います。

当院の新型コロナウイルスPCR検査陽性率は37.9%と高い

 当院ではこの一か月の間に計58回のPCR検査を行い、陽性率は37.9%でした。発熱外来を受診された方のうち、約4割の方が新型コロナウイルス感染症と診断されたことになります。

 これは自治体等で公表されているPCR検査の陽性率(西宮市公表の5月の陽性率は15%)よりも高い値ですが、どちらかの数値が間違っているわけではなく、受診される患者さんの層が異なるのだと思います。

 というのも、当院のPCR検査を実施曜日で分けると圧倒的に土日に多くなります。

 当院を受診された経緯をお伺いすると、

 土日に検査可能な病院を検索した結果当院を見つけられた方や、土日に検査可能な医療機関を保健所に問い合わせたところ当院を紹介されたという方が多くなっています。

 つまり、月曜までは待てないほど新型コロナウイルス感染を強く疑う理由がある方(例えば家族に陽性者がいる方や、熱や咳などの症状が強い方など)が当院を多く受診されているようです。

 この結果、陽性率が高くなっているのだと思われます。

数字の解釈は難しい

 このように数字を解釈する際には、その数字が導き出された背景を想像する必要があります。

 新型コロナウイルスに関しては様々な風説、デマが未だに飛び交っており、中には真実を覆い隠してしまうほど勢いのあるデマも存在しています。

 そういったデマの多くがもっともらしい数字を用いていますが、その解釈を(意図的に)間違っているものが大半です。

 数字は嘘をつきませんが、詐欺師は数字を用いる

 とは昔からある格言です。数字の解釈は非常に難しいものです。医療情報を検索する際は、出来るだけ(信頼のできる)公的機関からの情報を探してください。

症状別のPCR検査陽性率

 話が脱線しましたが、症状別にみた陽性率を記しておきたいと思います。

 37.4度以上の発熱があった患者さんのうち(検査時点で解熱していた人も含む)46.2%の方が陽性でした。

 咽頭痛があった患者さんのうち、50%の方が陽性でした。

 咳があった患者さんのうち、54.2%の方が陽性でした。

 倦怠感を訴えられた患者さんのうち、38.2%が陽性でした。

 頭痛を訴えられた患者さんのうち、35.3%が陽性でした。

 関節痛または筋肉痛を訴えられた患者さんのうち、35.3%が陽性でした。

  嘔気または下痢を訴えられた患者さんのうち、20%が陽性でした。ただし一般の急性胃腸炎のように1時間に1回以上の水様便と頻回の嘔吐が持続する、というような酷い症状の方は全て陰性でした。嘔吐にまでは至らない嘔気や、1,2回の軟便という軽い腹部症状の方で陽性となることがある印象です。

 このように新型コロナウイルスは多彩な症状で陽性となります。

 また、各症状を陽性者で認める確率はそれぞれ、発熱81.8%、咽頭痛72.7%、咳59.1%、倦怠感59.1%、頭痛27.3%、関節痛27.3%、嘔気または下痢9.1%でした。また流行当初に特徴的な症状として知られていた味覚・嗅覚の消失を訴えてこられた患者さんは0人でした(味覚、嗅覚の低下を訴えてこられた患者さんは何人かおられましたが、もともと「低下」のみでは新型コロナウイルスとの相関は低く、「消失」になると特徴的であるとされていました)。

 多くの報告にあるように、流行の主体がオミクロン株になったことで患者さんの症状も変化しているようです。

若年者での陽性率が高い

 年代別の陽性率をみると

 10歳以上19歳以下で57.1%

 20歳以上39歳以下で33.3%

 40歳以上で30.8%

 と若年者で高い傾向となっています。

 近隣の学校で学級閉鎖が出たりしているように、10代での感染が広がっているのかもしれません。ただし「ある陽性者を当院で診断したために、その噂を聞いた陽性者の友達(濃厚接触者)が複数人当院を受診して多くが陽性になった」というように芋蔓式に感染者の集団を引き当てたため陽性率が高くなっている可能性もあります。

 数字の解釈は本当に難しいです。

 現在の市中感染の程度を見積もる場合は、検査母数の多い西宮市公表のデータを見て頂くのが最も確実だと思います。

感染者や有症状者との接触歴があると、陽性である可能性が高くなる

 また、感染者や有症状者との接触歴がある方(濃厚接触者の基準を満たさない方も含む)が陽性となった率は60%でした。どのような症状よりも、感染者や有症状者との接触歴の有無の方が感染を疑う所見になっています。

新型コロナウイルスの流行自体は持続している

 感染者数は減少傾向にあり、重症者数も減少しているとはいえ新型コロナウイルスの流行はまだまだ持続しています。

 風邪症状のある方は早めに検査を受けて新型コロナウイルスかどうか調べるようにして下さい。流行が大きくなれば高齢者にも感染が広がり、入院を要するような中等症患者、ICU入室が必要になるような重症患者が増えることになります。

 また、新型コロナウイルスに感染していることが明らかとなった方は、戸惑いも大きいかと思います。下記のリンクから西宮市の情報提供ページへ移動することができますので、是非参考にしてください(2022年6月6日現在)。