「ここまでわかる!胃カメラ・大腸カメラ・腹部エコー」シリーズ 第1回 進行胃癌(胃カメラ)

注意事項1:本シリーズで取り上げる画像は全て当院で撮影したものです。検査画像の利用については、内視鏡検査前のアンケートで利用の可否を確認しています(腹部エコー検査に関してはオプトアウト方式をとっています)。

注意事項2:患者様の善意によって成り立つ投稿です。本シリーズは疾患の啓発や若手医師の研鑽に役立つことを目的としています。画像の無断利用、転載は固くお断りします。削除依頼に応じて頂けない場合は法的手段を取ります。

はじめに

もうすぐ当院が開院して2年になります。

この間、胃カメラ・大腸カメラ・腹部エコー検査などを通して、多くの病気が見つかってきました。

ただ、特に内視鏡検査に関しては、どうしても多少のしんどさを伴うことが多いためか、検査を躊躇される方が多いように感じています。

そこで実際の画像を目にすることで少しでも検査への心理的な抵抗を軽減出来ればと考え、このようなシリーズを企画しました。

画像の解説

食道胃接合部癌
食道胃接合部癌(ラインより右側)

写真は胃の入り口(噴門)付近を下から見上げている状態で撮影しています。

ちょうどカメラの先端をアルファベットの「U」の字のように反転させているので、内視鏡先端部分の後ろ側を見ることが出来ます。

真ん中に見えている黒い棒のようなものが内視鏡本体です。

2枚の写真は同じものですが、右側(スマホの場合は下)の写真には青い線を入れています。この線より右側は全て「癌」です。ちょうど胃の入り口(内視鏡が出てきている所)を取り囲むように癌が広がっていることが分かります。

白っぽく見える部分は「白苔」と言って、胃癌や胃潰瘍の表面によく付着している物質です。癌表面の粘液や壊れた癌細胞の一部、食べ物の一部などが混ざり合ってこのような付着物が形成されるのではないかと考えられていますが、詳しくはわかっていません。

写真では見えていない白苔の下の部分や、やや赤みの強いピンク色に見える部分が癌の本体です。

食道胃接合部癌について

この写真の癌は胃と食道の境界付近に出来ています。このような癌を食道胃接合部癌と呼びます。

と言うのも、この辺りに出来た癌はだいたい食道と胃とにまたがって存在しているため、食道由来の癌(食道癌)か胃由来の癌(胃癌)かが分かりにくいことが多く、このような曖昧な呼び方になっています。

ただし、この癌に関しては大部分が胃側にあり、(この写真からは分かりませんが)食道側への広がりが乏しかったため、まず胃由来と考えられます。

さて、みなさんは胃癌の症状にどんなものがあるかご存知でしょうか?

痛みや吐き気が出ると思われている方が多いと思いますが、実は一般的に胃癌は症状が出にくい癌です。

よほど大きくなったり、胃の外側へ広がったりしないと、みなさんがイメージするような症状はほとんど出ません。

私の体感としては、胃癌がみつかるきっかけとして最も多いのはバリウムや胃カメラを利用した「検診」で、次いで多いのが血液検査で指摘される「貧血(立ちくらみではなく赤血球減少のこと)」になります。

胃癌で痛みや吐き気が出るとすれば、多くの場合その癌はかなり進行しています。初期ではまず痛みは出ませんので、自覚症状がないからと言って検査をしないのは間違いです。

ただし例外的に胃の入り口に近い癌(今回の食道胃接合部癌)や胃の出口(幽門)に近い癌の場合、出入り口を塞いでしまうことがあり、これによって比較的早期に「吐き気」や「食事が詰まるような感じ」が出ることがあります。逆に言うと、胃の出入り口から離れたとことろの癌の場合、胃の内腔はかなり広いため食事がつまることはなく、吐き気はまず出ません。吐き気を感じるのは大量に出血した場合や、胃全体に癌が広がって胃がほとんど動かなくなった場合くらいです。

このように胃癌は自分では気づきにくい病気ですので、早期発見・早期治療のためには定期的な検診が最も大事になります。