「ここまでわかる!胃カメラ・大腸カメラ・腹部エコー」シリーズ 第3回 大腸癌(大腸カメラ)

注意事項1:本シリーズで取り上げる画像は全て当院で撮影したものです。検査画像の利用については、内視鏡検査前のアンケートで利用の可否を確認しています(腹部エコー検査に関してはオプトアウト方式をとっています)。

注意事項2:患者様の善意によって成り立つ投稿です。本シリーズは疾患の啓発や若手医師の研鑽に役立つことを目的としています。画像の無断利用、転載は固くお断りします。削除依頼に応じて頂けない場合は法的手段を取ります。

画像の解説

写真は大腸癌です。左(または上)の写真は辺縁部分がよく見えるように横から撮影を、右(または下)の写真は全体像が分かるように少し上から撮影をしています。

大きさは15~20mmくらいで、それほど大きいわけではありません。

しかし辺縁の形態や隆起が目立つことなどから、少し深いところまで癌が広がていることが疑われます。

内視鏡治療よりも外科的切除の適応となる病変です。

大腸癌早期発見のために

他の多くの癌と同様、大腸癌も自覚症状に乏しい癌です。

よく便秘が症状として挙げられますが、正直なところ大腸癌によって便秘になるとすれば、それは癌がとても大きくなって腸が閉塞しかかっている状態を意味します。

そこまで大きくなった癌は往々にして大腸の外にも広がっており(いわゆる転移をしている状態)、手術をしても完全には治せないことが多くあります。

その他、多いのは血便ですが、これもそれなりに癌が大きくなってからです。

画像検査の発達した現在では、早期に発見した大腸癌はほぼ100%完治させることが出来ます。自覚症状が出る前に癌を発見し、治療することが重要です。

現在、大腸癌の早期発見のために利用されている検査は便潜血検査、注腸検査、大腸カメラの3種類です。

便潜血検査は便の一部を提出するだけなので、最も簡便な検査です。大腸癌の表面は脆く、容易に出血します。右側の写真は左の写真を撮影してから水で表面を洗っただけですが、それでも表面に薄っすらと血液が滲んできています。水で洗うだけでも出血するのですから、表面を便が通過した場合は言わずもがなです。

ただしこのような軽度の出血になると便を肉眼的に観察しても気付くことが出来ません。この出血を化学反応を利用して検出するのが便潜血検査です。集団検診に用いると大腸癌による死亡率を低下させることが知られており、検診に用いるには有用な検査です。

ただし、便潜血検査は精度が低く、検査で陰性であっても癌を否定出来ないことに注意が必要です。陽性になった場合は大腸内視鏡検査を実施することになります。

注腸検査はおしりからチューブを入れて、造影剤(主にバリウム)や空気を流し込み、レントゲン写真を撮ることで病変を見つけます。

大腸カメラと同様に下剤の内服などの準備が必要なこと、それなりの苦しさがあること、さらに大腸カメラよりも死角が多く出来やすく病変を見逃しやすい(特に平坦型の病変を見つけることは困難)ことがデメリットとして挙げられます。

最近は検診以外で行われることは減っており、大腸カメラに取って代わられつつある検査です。

大腸カメラは事前に下剤を飲まないといけない、検査に際して痛みが出やすいなどのデメリットはあるものの、最も精度に優れた検査です。他の検査にない特徴として

  1. 形だけではなく色調や粘膜の微細な構造変化から診断することが出来る。
  2. その場で病変の一部を採取し、顕微鏡検査(診断確定のために必須の検査)に回すことが出来る。
  3. 注腸検査では見つけにくい平坦型の病変を見つけることが出来る。
  4. 大腸癌の前癌病変とされるポリープ(腺腫)を見つけたら、その場で切除することも出来る。

といった利点があります。

大腸カメラが敬遠される一番の理由は検査時の痛みですが、最近は挿入方法の洗練化、鎮静剤の使用などによってかなり苦痛は感じにくくなっています。また、2番目の理由である下剤の飲みにくさに関しても、最近では飲みやすい製品が出てきています。検査に不安がある場合は遠慮なく相談して下さい。

お勧めとしては40歳を越えたら一度は大腸内視鏡検査を受けて頂き、結果を踏まえてその後の検査間隔を医師と相談されるのが良いと思います。