「ここまでわかる!胃カメラ・大腸カメラ・腹部エコー」シリーズ 第5回 虚血性腸炎(腹部エコー)

注意事項1:本シリーズで取り上げる画像は全て当院で撮影したものです。検査画像の利用については、内視鏡検査前のアンケートで利用の可否を確認しています(腹部エコー検査に関してはオプトアウト方式をとっています)。

注意事項2:患者様の善意によって成り立つ投稿です。本シリーズは疾患の啓発や若手医師の研鑽に役立つことを目的としています。画像の無断利用、転載は固くお断りします。削除依頼に応じて頂けない場合は法的手段を取ります。

画像の解説

虚血性腸炎
虚血性腸炎 別症例

虚血性腸炎は耳慣れない病気かもしれません。

しかし血便と腹痛(左側が多い)を訴えて外来に来られる方に最も多いのはこの疾患です。

動脈硬化などを背景に一時的に大腸粘膜の血流が低下することにより、激しい痛みと粘膜の障害を生じる病気です。ただし血流はすぐに回復することが大半で、数日~1週間以内に自然と良くなります。痛みが軽ければ外来でも経過観察可能です。

症状とお腹の所見からほぼ診断可能ですが、診断確定にはエコーが最も適しています。

エコー検査で浮腫の目立つのっぺりとした大腸を認めれば、まずこの疾患です。写真で黄色矢印で示した、黒い帯状の部分が虚血性腸炎を起こした大腸になります。

若手医師向けの観察方法の解説

プローブはリニア型が推奨されていますが、コンベックス型で十分です。私は他疾患のスクリーニングもついでに行うことが多いので、コンベックスで観察しています。

エコーの深さは大体10~12cmくらい(体格に応じて)に設定すると病変を見付けやすいと思います。腸管を描出できればもう少し拡大しても大丈夫です。

後腹膜に固定されている下行結腸を狙って観察を始め、S上結腸まで追いかけていくようにすると病変を広く観察できます。

下行結腸を出す際には腸管の走行に沿うようにプローブを縦にすると、写真のように結腸を長軸で描出できます。正常の結腸は腸管ガスの影響でほとんど見えませんので、見えること自体が異常です。

腹部前面からエコーを当てても見えますが、肥満気味の患者さんでは側面からの方が見えやすいこともあります。左の腎臓を描出してから前面側にプローブを振る(またはずらす)と下行結腸が見えます。腎臓と一緒に見えていることもあります。