「ここまでわかる!胃カメラ、大腸カメラ、腹部エコー」シリーズ 第7回 早期胃癌

注意事項1:本シリーズで取り上げる画像は全て当院で撮影したものです。検査画像の利用については、内視鏡検査前のアンケートで利用の可否を確認しています(腹部エコー検査に関してはオプトアウト方式をとっています)。

注意事項2:患者様の善意によって成り立つ投稿です。本シリーズは疾患の啓発や若手医師の研鑽に役立つことを目的としています。画像の無断利用、転載は固くお断りします。削除依頼に応じて頂けない場合は法的手段を取ります。

画像解説

胃の真ん中付近(正確には胃体下部小弯側)にある平坦型の病変です。少し画像のシャープネス等を変更して見やすくしています。

Bで示した円の内側が癌になります。周囲との変化が乏しく、微細な凹凸不整と表面構造の変化から診断しました。実際の大きさは3cm程度で、この病変自体による症状はありませんでした。

早期胃癌とは

胃癌は胃の表層部分=粘膜から発生します。発生した当初は粘膜内にのみ存在していますが、しだいに粘膜より深い層(粘膜下層、筋層など)に入り込むようになり、いすれは血管やリンパ管に侵入して胃の外側へも広がっていきます。

癌が胃以外の臓器にも広がってしまうと完治させることは困難となってしまいますので、胃の中に留まっている状態、より早期の状態で発見することが重要とされています。中でも胃の表層部分である粘膜のみに留まっている癌は、胃カメラによる内視鏡治療のみで完治させることが可能です(全身麻酔が必要な外科手術は不要です)。このように「胃の表層部分である粘膜のみに留まっている癌」は他の進行した胃癌とは明確に治療法・予後が異なることから、他の胃がんとは区別して「早期胃癌」と呼ばれます。

一般に早期胃癌は薄く平らな病変であることが多く、わずかな陥凹・隆起・色調変化・表面構造の変化をもとに診断する必要があります。しかし中にはこの症例のように特徴に乏しく見逃されやすい症例も存在します。診断力を上げるためには胃癌の発生母地や自然史・病理に関する知識だけでなく、内視鏡医としての十分な経験と専門施設や各種研究会でのトレーニングが必要となります。