「ここまでわかる!胃カメラ、大腸カメラ、腹部エコー」シリーズ 第10回 胃潰瘍

注意事項1:本シリーズで取り上げる画像は全て当院で撮影したものです。検査画像の利用については、内視鏡検査前のアンケートで利用の可否を確認しています(腹部エコー検査に関してはオプトアウト方式をとっています)。

注意事項2:患者様の善意によって成り立つ投稿です。本シリーズは疾患の啓発や若手医師の研鑽に役立つことを目的としています。画像の無断利用、転載は固くお断りします。削除依頼に応じて頂けない場合は法的手段を取ります。

画像解説

写真Aは小さめの胃潰瘍、写真Bは大きな胃潰瘍の写真です。別々の患者さんのものです。

写真Aでは黄色く囲った部分の中心付近にある白い所が胃潰瘍です。粘膜が抉れてその下の層が見えています。周囲には発赤した粘膜があり、おそらくこの部分も含めた大きな潰瘍であったものが自然と治ってきている状態だと思います。

写真Bは画面右半分の白い部分は全て潰瘍です。非常に大きな胃潰瘍になります。倦怠感と腹痛を訴えて受診され、血液検査をすると貧血(赤血球が不足している状態)があり、胃潰瘍からの出血を疑って検査をしたところ、御覧のような潰瘍が見つかったという経過です。

胃潰瘍の解説

胃をはじめとする消化管の壁は何層かに分かれています。一般的には一番内側に「粘膜」と呼ばれる細胞が密集し消化・吸収機能を担う層、その下には「粘膜下層」と呼ばれる血管や繊維質、リンパ組織からなる層、さらに 下には「筋層」とよばれる名前の通り筋肉からなる層があります。

もともと胃は消化液によって酸性になったり、体外から色々なものが取り込まれたりする場所であるため、傷つきやすい臓器です。内視鏡検査をしていると、無症状でも胃の中に小さな傷が出来ている人はたくさん見かけます。

そのような傷のうち、表層部の粘膜だけが傷付いているものは「びらん」と呼ばれます。びらんが深くなり、粘膜の下の層まで及んでいるものを「潰瘍」と呼びます。

潰瘍がさらに深くなると、消化管の壁に穴が開いて「穿孔」と呼ばれる状態になったり、血管に傷がついてしまうと「吐血」「下血」といった症状が現れて救急車で運ばれて緊急処置・手術を受けることになります。もちろん入院です。

よって胃潰瘍は悪化する前に診断して、治療をすることが大事です。確実な診断方法は胃カメラしかありません。早期に見つかった胃潰瘍は、外来で薬を飲むだけで治ります。

また、胃潰瘍や胃癌はピロリ菌の感染が原因となっていることがあります。胃潰瘍が見つかった際には必ずピロリ菌感染の有無を確認し、もし感染している場合は治療を受ける必要があります。