シリーズ「癌とは」-⑥癌の三大治療
癌治療の原則
これまで癌とはどのような病気か、どのような特徴を把握する必要があるのか、治療の目標をどのように定めるのかについてお伝えしてきました。
今回はもう少し具体的に癌の治療について解説したいと思います。
まずは癌治療の原則からお伝えしましょう。
癌とは、癌細胞と呼ばれる異常な細胞がどんどん増える病気です。
このような病気を治療する時に重要なのは「取りこぼしなく全ての癌細胞をやっつける」ことです。
というのも一部の癌細胞を取りこぼしてしまうと、その残った癌細胞が増えてすぐに元通りになってしまうためです。
ですので、癌の治療を実施する際には「存在する全ての癌細胞を対象にした治療を行う」ことが原則になります。
ただし、ある特定部位の癌細胞がひどい痛みの原因になったり、命に関わるような合併症の原因になったりする場合には、その部位のみを狙った治療を実施することもあります。
癌の三大治療
上記の原則を叶えるために用いられる治療は主に以下の3つです。
1.手術
2.放射線照射
3.抗がん剤(化学療法と呼ばれることもあります)
になります。
この3つは全ての癌に共通する主要な治療法であり、癌の三大治療と呼ばれることもあります。
実際には三大治療に加えて、癌の原発部位に応じた特殊治療が用いられることがありますが、各論的な内容になるため今回は割愛させて頂きます。
以下に三大治療のうち「手術」と「放射線照射」について解説します。
「抗がん剤」については内容が多岐に渡るため、別記事にまとめたいと思います。
手術療法
手術療法は一番わかりやすい治療です。
悪い所は全て切り取ってしまえ、という治療ですね。
原則通りに全ての癌細胞を治療対象とするためには、癌の存在がわかっているところ、あるいは存在する可能性が高い所を全て切除する必要があります。
このため、癌を切除できるかどうかは癌の位置によって決まります。
つまり切除すると生命を維持できなくなるような場所・範囲に癌が存在していると、当然それは切れないわけです。
癌と診断がついた後には、CTやMRIなどの画像検査をたくさん受けさせられますが、これらの検査の多くが癌の存在範囲を決めるために行われます。
一般的に癌が大きくなるほど手術は困難になりますが、手術できるかどうかは単純に癌の大きさだけで決まるのではなく、血管との位置関係など多くの要素から総合的に判断する必要があります。
また最近は手術前後に抗がん剤治療を組み合わせて実施することも増えています。
放射線治療
放射線治療もそれほど難しくありません。
イメージとしては放射線というビームをあてて、癌細胞を焼き殺す治療です。
手術と同様、原則通りに「全ての癌細胞を治療対象」とするためには、癌が存在する所すべてにビーム(放射線)をあてて焼き払う必要があります。
しかし焼くと重大な問題が起きてしまうところには、ビーム(放射線)を当てることは出来ません。
ですので手術同様、癌が大きくなるほど放射線治療は困難になります。
近年では重粒子線などの新しいタイプの放射線も利用できるようになってきており、症例を選べば良好な治療成績をあげています。
ただし副作用の出やすい臓器や、放射線が効きにくいタイプの癌もありますので、治療適応には専門的な判断が必要になります。
また、放射線治療に対する感受性を増加させる目的で、抗がん剤治療を併用することもあります。
まとめ
今回は癌治療の原則と手術・放射線の2治療について簡単に解説しました。
手術と放射線治療を原則に従って実施するためには癌の範囲がある程度限定されていることが必要になります。
このためには癌の早期発見が重要です。
多くの場合癌の初期は無症状ですので、是非お住いの自治体の癌検診等を利用して癌の早期発見に努めて頂ければと思います。